景色のあいだを、横へ細くたなびく霞。輪郭の定まらない自然の姿が、絵巻では場面をつなぐ余白に、着物では花や草を引き立てる文様になります。霞文に込める天下泰平の願いとともに、桜、秋海棠、秋草を組み合わせた図案から、その静かな働きを見てみましょう。
| 文様の御利益 | 天下泰平 |
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霞文とは

霞文(かすみもん)は、霞がたなびく様子を表した文様です。霞形(かすみがた)・霞流し(かすみながし)とも呼ばれます。空や遠くの景色がぼんやりとかすむ姿や、薄い帯のように漂う霞を、横長のかたちに整理して表します。
霞そのものには、花びらや葉のような決まった輪郭がありません。文様では長短の帯や、先端を丸めたかたち、淡くぼかした色面などに置き換えます。着物では模様と模様のあいだをつなぎ、区切りながら、画面に流れをつくります。
「霞と桜」の図版では、黄土色の地に横長の霞を渡し、朱色と生成りの桜を重ねています。霞の落ち着いた面と、五枚の花びらがつくる明るいかたち。その対比によって、花だけを散らす場合とは違う奥行きが生まれます。桜の散らし方や図案の違いは、桜文の解説でも見比べられます。
霞に秋海棠の肩衣

「霞に秋海棠文様肩衣」(厳島神社)の図版では、白く表された草花が伸び、その向こうを濃淡のある霞が横切ります。植物の茎がつくる縦の動きと、霞の横の広がりが重なった構成です。
霞は、花や葉をすべて見せるのではなく、一部を隠す役割も果たします。手前に見える枝葉と、その奥に続いていそうな景色。見せる部分と隠す部分をつくることで、平らな布の上にも広がりを感じられます。
花菱と秋草の縫箔

「花菱に霞と秋草文様縫箔」(鐘紡株式会社)では、細い輪郭で表した霞と、密度のある秋草が組み合わされています。霞の上へ草花がのぞき、花菱や細く弧を描く線が、そのあいだを軽やかに埋めています。
上の肩衣では霞の色面が大きく広がりますが、こちらは輪郭の内側を空けた霞が目を引きます。同じ霞でも、面で表すか、線で表すかによって、まわりの草花との関係が変わります。桜との春らしい取り合わせだけでなく、秋草に添えても使われる意匠です。
絵巻と屏風にたなびく霞
大和絵や絵巻物に描かれる霞は、遠近感を示すだけでなく、時間の経過や場面の転換を伝える役割も担います。描く対象をすべて並べる代わりに、霞で一部を覆うことで、別の場所や次の出来事へと見る人の視線を導きます。
屏風や絵巻のあいだに置かれた余白は、何もない空間とは限りません。霞の向こうに何が続くのかを、見る人が想像する余地になります。絵画のほか、彫刻、漆器、陶器にも霞の表現が用いられてきました。
紋にも霞をかたちにした例があります。能役者の喜多氏の霞紋は、「王」の字の横線を左右へ伸ばしたような意匠です。また、「エ」の字を四つ組み合わせたような構成は「春霞紋」と呼ばれます。たなびく景色を簡潔な線へ置き換えるところに、文様や紋としての面白さがあります。
1656年の俳諧集『口真似草』には、山々の霞を「霞流し」の屏風になぞらえる一友の句が見られます。自然の景色を文様の名で眺める感覚が、言葉の中にも残されています。
霞に託す天下泰平の願い
霞文に込める願いは、天下泰平です。天下泰平とは、世の中が平和で穏やかであること。文様を使うときには、たなびく霞の姿を楽しみながら、平穏な暮らしへの思いを重ねられます。
霞を見るときは、長さや端のかたちだけでなく、何と組み合わせ、何を隠しているかにも目を向けてみてください。花を引き立てたり、景色をつないだりする静かな働きが、着物や小物の表情を豊かにしています。
御利益アイテム
たなびく霞に、穏やかな日々への願いを。
願いを込めた文様を、あなたの毎日に。
世の中が穏やかであるようにとの思いを、霞の意匠に重ねて。持ち歩く財布と、髪に添えるかんざしを選びました。菊や桜のあいだを流れる霞を、和装の日にも洋服の日にも身近に楽しめます。
霞と菊を持ち歩く西陣織の財布
西陣織「高美者」のラウンドファスナー長財布は、織物の華やかさを毎日の持ち物に取り入れられる一品です。霞を楽しむなら、白い地に菊と霞を配した「白地ェ霞菊文」を選びます。花の丸いかたちと横へ伸びる霞が重なり、光を受ける糸に細かな表情が生まれます。約19×9.5×2cmで、カードポケットは10か所。天下泰平への願いを文様に託し、バッグから取り出すたびに織りの景色を眺められます。
柄は「白地ェ霞菊文」を選び、霞と菊の出方、織りの光沢、カード収納を商品ページで。
霞と桜を髪に添えるかんざし
霞と桜の螺鈿バチ型かんざしは、黒い地に、細くたなびく霞と桜を蒔絵風に表した髪飾りです。螺鈿が光を受けて色を変え、すっきりとした霞の線と花びらを引き立てます。樹脂と螺鈿を用いた日本製で、長さ約12cm・幅約8cm。着物のまとめ髪はもちろん、洋装の髪飾りにも合わせられます。穏やかな日々への思いとともに、小さな景色を装いへ添える楽しみがあります。
螺鈿の光り方と霞の細い線、約12×8cmの大きさ、まとめ髪への合わせ方を商品ページで。
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