道端に咲く菫、丸まった蕨、すっと伸びる土筆。身近な野の草花を取り合わせた春草文には、春を迎える小さな景色が広がっています。小袖に縫い表された草花や、乾山の器に描かれた意匠から、春草の伸びやかな表情を見てみましょう。
| 文様の御利益 | 特定の御利益は不明。春の野に芽吹く草花の、みずみずしい風情を表す文様です。 |
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春草文とは―野の草花を取り合わせた春の文様
春草文(はるくさもん)は、春に咲く花や芽吹く草を取り合わせた文様です。よく描かれるのは、蒲公英(たんぽぽ)・菫(すみれ)・蕨(わらび)・土筆(つくし)・菜の花など。野原や道端で目にする草花が、衣服や器の上に春の気配を運びます。
春草文の魅力は、いくつかの草花を組み合わせ、野の景色をつくるところにあります。花の色や葉の形、茎の伸び方を取り合わせることで、同じ春草でもさまざまな表情が生まれます。
菫・蒲公英・蕨・土筆―身近な草花のかたち
小さな花をつける菫、地面に葉を広げる蒲公英、先端がくるりと巻いた蕨、節のある茎をまっすぐ伸ばす土筆。春草の文様では、こうした植物それぞれの姿が、季節を伝える手がかりになります。
室町時代の絵巻や襖絵には、蒲公英と菫を景色の一部に添える表現が見られます。春の花木である躑躅(つつじ)や山吹を取り合わせることもあり、ほかの季節の植物と組み合わせれば四季草花の意匠へと広がります。
紫縮緬地に浮かぶ、春草の小さな景色
冒頭の図版は、紫縮緬地春草模様縫小袖(国立歴史民俗博物館)の文様をもとにした意匠図です。濃い地色に、淡い緑の葉や白・紫の小さな花を配し、斜めに走る金色の線が草花のまとまりをつないでいます。
目を引くのは、小さな草花があちこちに息づくような景色です。地色を残した部分と草花の密度の違いによって、野の広がりや、芽吹きの軽やかさが感じられます。
春草と桐唐草―大きな葉と小さな花の取り合わせ

春草桐唐草文縫箔肩裾小袖(浦嶋神社)をもとにしたこちらの図版では、大きな桐の葉と曲線を描く蔓に、小さな草花が重なります。赤褐色や深緑、金茶色の組み合わせが、落ち着いた豊かさをつくっています。
幅のある葉と細い花茎を見比べると、植物の大きさや線の違いを生かした取り合わせがよく分かります。春草は草花だけでまとまるほか、こうして別の植物文様と重なることで、装飾の密度や動きを増していきます。
琳派と乾山の器に見る春草
春草は、本阿弥光悦や尾形光琳・乾山ら、琳派の表現にも取り入れられました。たくさんの花を取り合わせるだけでなく、一種類の草花を扇や団扇、向付などに大きく描くこともあります。身近な植物の姿を選び取り、器や道具の形に合わせて表す楽しみです。
江戸時代の陶工・尾形乾山(おがたけんざん)の春草図茶碗には、呉須の青や鉄絵の褐色で、蕨などの草を描いたものが見られます。器の内外に草花がのびる様子は、手のひらに春の野をおさめたよう。小袖から日々の器まで、春草文は身近な季節の景色を楽しませてくれます。
この文様を楽しむアイテム
小さな草花が運ぶ春を、お茶のひとときに。
文様をまとう・持つ楽しみを、あなたの毎日に。
春草の景色を暮らしに迎えるなら、お茶を点てる茶碗や、お菓子を入れる小さな漆器はいかがでしょう。土ものの柔らかさと朱塗りの艶、それぞれに草花が映える2点です。
蕨と土筆がのびる、乾山写しの抹茶碗
蔵珍窯の「乾山写銹絵染付春草図 抹茶碗 YE-15」は、美濃焼の陶器に春草を描いた茶碗です。淡い地色に青い葉、くるりと巻いた蕨や土筆が浮かび、器を回すたびに草花の表情を楽しめます。直径約11×高さ8cm。おうちでお茶を点てる時間にも、春の野の風情を添えてくれる一碗です。
くるりと巻いた蕨と土筆が愛らしい乾山写し。青と褐色で描かれた春草の表情を、商品ページで。
朱塗りに春草がきらめく、小さな菓子器
山田平安堂の「ぼんぼん入れ 春草・朱」は、天然木に漆を塗った蓋付きの菓子器です。艶やかな朱色に春の草花の蒔絵を添え、直径約12×高さ9cmの丸い形に仕上げています。ひと口のお菓子を入れて、お茶のそばに置きたくなる器です。商品ページには秋草柄もあるため、絵柄は「春草」をお選びください。
艶やかな朱色と、金色にきらめく春の草花。お茶の時間に添えたい蓋付きの菓子器を、「春草」の絵柄とともに商品ページで。
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